“サイ・ガールの家族”とは何か。ゲストを経て、過去作の声を聞く。

ドローイング&クリエイションにおいて、そのキャラクター性を確立する。その為にはどのようなアプローチが必要か考えさせられる。
SNS上で積み重ねられたブランドイメージやそのキャラクター像は、一個人の範疇を超え”ネットミーム”としての有り体を形成する事も頻発する現代。
遊戯王OCGカードにおいても同様な現象が起きている。
「ラビュリンスはポンコツ」「エルドリッチとラドリーは仲良し」2022年の最たる例だ。

そんな中、《OCG二次創作》としての在り様に一石を投じる麒麟児「ケシゴム(氏)」の切り口は当に鋭利にして大胆。
彼の作品の特徴として、一般的なOCG二次創作漫画とは一線を画す“ジャンル外キャラクターの多さ”とそれを上手に溶け込ませる“漫画力の高さ”が作品の魅力にある。

今作に関しては、その特徴がより顕著であり、中でも『“サイ・ガールの家族”』の存在が一際印象深い。

本来、《OCG二次創作》では”モンスターの設定の曖昧な部分を補完するような楽しみ方“と言うのは主流であり王道である。
しかし今作では、ケシゴム(氏)はその大前提としなる”家族が居る“と言う、人や動物、生物の根源として当たり前の部分に大きく触れてきたのだ。

誤解の無い様予め説明するが、この部分はOCG同人界隈における共通認識として『不可侵領域アンタッチャブル・エリア』では無い。
既に、公式の設定が無い故に、その親族を創作する…という表現自体は少なからず用いられている。
しかし、そのどれもが“世界観の統一”があった。故に今作の「“サイ・ガールの家族”」と言うのは表現として”異常”なのである。

今作では、
“サイ・ガールのお父さん”をスマホ片手のスーツ姿の中年男性として、
“サイ・ガールのお母さん”をエプロン姿のショート髪の中年女性として表現しており、会話の内容からサイ・ガール(娘)との仲睦まじい関係性が見て取れる。
しかし、サイ・ガールと会話するシーンでは、作風や等身、身体的特徴はサイ・ガールに類似点が無く、全くの別作品のような感覚を覚える。
特筆すべきは、名前が無い事と結婚指輪をしてない事に疑問を抱いた。昨今、指輪をしない夫婦が多く居る事は何も不思議では無いが、和気あいあいとしたやり取りの中で、少し引っかかりを感じたのは私だけでは無いだろう。

“サイ・ガールのお姉ちゃん”も同様である。黒髪ロングで、清楚な印象を受ける女学生ではあるが、初見でサイ・ガールのお姉ちゃんであるコトを誰が言い当てられようか…と言うようなキャラクターデザインである。が、こちらは「ケシゴム(氏)」の手癖もあってか、比較的サイ・ガールに(100歩譲ってだが)似てなくも無い。

では何故、この様な”歪(いびつ)”な家族が生まれたのか。
そのヒントは、彼の過去作にあった。

サイ・ガールと俺の10年間 -AcrossField https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ365259.html

結論から言うと、既に彼の過去作品の中に”サイ・ガールの家族”は居た
正確には、「お母さん」と「お姉ちゃん」ではあるが、この10年まとめ本の中で“既出”であったのだ。

その瞬間、”歪(いびつ)”に感じた家族像も点と点が繋がり、まるでシンクロ召喚のようにある一点に起結したのである。お姉ちゃんの存在こそ、今作を読み解くヒントになっていたという事に驚きを隠せなかった。この衝撃を受け急ぎ、ゲスト原稿として描かせて欲しい旨、ケシゴム(氏)本人に直談判し、彼はコレを快諾、執筆現在、締め切り前にもかかわらず、この様な趣も無い考察文すら待ってくれているのである。改めて、今回ゲストとして寄稿させて頂いた事に関して感謝の念を。また、読んで頂いた方々には、三次創作としての吟次をお楽しみ頂けたのであれば幸いである。

登場の内容については、権利の問題上控えさせて頂くが、具定期にはまとめ本の21pと97pである。
既にお手持ちの方は、是非確認頂きたい。まだ、持ってない方は、是非この機会に彼の本を確認して頂きたい。(過去作のまとめではあるが、描き下ろしの補完ページが追加されており、1冊全体で纏まりを持った良作である。-AcrossField 入門にはうってつけの一冊である。)

サイ・ガールと俺の10年間 -AcrossField https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ365259.html

さて、彼の芸風から今作の“サイ・ガールの家族”と言うのは、属に言う”使い捨てキャラ”に留まらず、今後のメディアミックスにも触れてくるコトは、想像に安い。何か大掛かりな取り組みすら考えてるのでは無いかと考えると、先んじてこの様なネタバラシになるような真似をするのも、考え物ではあるが、彼の1ファンとしての暴走として、どうかご容赦を願いたい。

このインパクトの強い登場を果たした“サイ・ガールの家族”の存在は、以降の“サイ・ガールの家族”を語る上での『基準点スタンダード』としてOCG同人界隈に深く根付くコトになるだろう。そして、広く周知されるべきであると私は考える。

なぜなら、”サイ・ガールの家族”という”テーブルのナプキン”※1を最初に手に取ったのは彼だからだ。

末筆ではあるが、願わくば第二、第三の”サイ・ガールの家族”の誕生、引いては《OCG二次創作》の有り様について、彼の様な、型にハマらない表現というのを波及していく事を切に願う。

※1表現引用元:ファニー・ヴァレンタイン大統領の台詞より/スティールボールラン(荒木飛呂彦)

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